九州大学P&Pとは、「九州大学教育研究プログラム・研究拠点形成プロジェクト」の略である。九州大学では、全学的立場から重点推進分野を支援するために大学全体の予算を傾斜配分している。経済学研究院の申請課題「韓国の産業と経営に関する総合的研究」（2000−2001年）は、1999年冬にこのP&Pの「研究拠点形成プロジェクト」に採択された。プロジェクト採択後、本研究グループはこれまで、研究部門と研究交流部門の2部門に分けてプロジェクトを推進してきた。前者の研究部門では経済学研究院のスタッフを中心に、韓国側研究者の協力を得て新たな成果を出すべく研究活動を続けている。2000年には調査チームを数回韓国に派遣し、JETRO・産業研究院・証券取引委員会・ソウル大などで新しい産業の動きや研究動向を把握した。後者の研究交流部門では毎月、専門家を講師として招聘し、討論会を重ねつつ韓国研究の拠点をつくるべく活動している。2000年には10回の韓国経済研究会を開催して、この一部を『韓国経済討論集』にまとめた。研究会の模様はインターネット・ホームページでも報告要旨の速報を公開しており、多くの反響がある。

　研究開始後1年が経過し、研究と交流の成果が積み重なるにつれて、これを成果物としてまとめる必要が出てきた。通常のプロジェクトでは、最終報告書とともに研究活動が終了する。しかし、P&Pの場合は、プロジェクトの趣旨が、「研究拠点形成」のため、何か持続性ある拠点をつくっておくべきと考えた。『韓国経済研究』の創刊により、今後、プロジェクト終了後も、研究誌を舞台に、多くの方が韓国研究の論文を発表し、議論できる。そういう場所を準備することで、「拠点形成」という課題に応えた。
　韓国経済の専門研究誌としての創刊に際しては、各専門分野の編集委員4名がこれを担当し、第1巻第1号及び第2号に10本の論文を編集・掲載した。編集委員会は、各執筆者に対してかなり厳しい要求を行った。これらの論文の執筆者にはまず、韓国経済研究会での1時間半の論文内容報告・討論を求め、それらの討論内容を反映させる形で論文執筆を求めた。また、10本全ての論文の執筆者に対して、300〜400wordsの英文アブストラクト添付を義務付けた。さらに、論文相互間の共通性が把握できるように、和英両方のキーワード列記を求めた。発刊に際しては、試行錯誤を重ねたが、できるだけ長く継続させて、今後は、各方面に報告・論文投稿を求めながら、活発な議論の場にしていきたいと考えている。本誌がいささかなりとも韓国研究のレベル向上に寄与することを祈念してやまない。『韓国経済研究』に関するお問い合わせは下記まで。