【報告】「『世界史』の中の韓国–その構造変動に関する総合的研究」教育学ブランチ研究会
去る9月17日(日)、本センターの研究事業の一環として、本センターと九州韓国研究者フォーラムの共催で研究会が開催されました。
日時:2023年9月17日(日)
会場:アクロス福岡604会議室
共催:九州大学韓国研究センター、九州韓国研究者フォーラム
後援:韓国国際交流財団
司会:元兼 正浩(九州大学 韓国研究センター長)
指定討論:佐々木 正徳(立教大学 外国語教育研究センター 教授)
2023年度から遂行されている本センターの研究事業「『世界史』の中の韓国–その構造変動に関する総合的研究」は、歴史、言語・文化、経済、教育など、多様な分野の研究プロジェクトと共に進められております。今回の研究会は、教育学ブランチの研究プロジェクト「1990年代以降の日韓の教育政策を世界的潮流の中に読み解く」の一環として行われたもので、熊本学園大学の金美連先生と九州産業大学の鄭修娟をお招きして最近の韓国の教育に関連する興味深い発表が行われました。また、立教大学の佐々木正徳先生が指定討論者として参加し、より深い議論が展開される貴重な時間でした。
第1報告:金 美連(熊本学園大学 外国語学部准教授)
「韓国の学校における多文化共生の模索:多様性の追求と社会統合のはざまで」
第1報告では、最近急速に多文化化が進んでいる韓国において、重要な社会的課題として浮き彫りになっている多文化教育についての報告が行われました。本報告では、韓国の中央政府が進めてきた多文化政策及び多文化教育の具体的な展開過程とその変化様相などを紹介すると同時に、韓国の多文化教育が見せる特徴及びその課題などについて議論されました。また、本報告では、多文化の子どもに対するまなざしなど具体的で生々しい事例が豊富に提供され、現時点の韓国の多文化教育についてより深く理解できる時間になりました。
第2報告:鄭 修娟(九州産業大学 国際文化学部講師)
「韓国における教師の権利保障のための制度的基盤」
第2報告では、「教育権」などをめぐる教師の権利保障に関連するテーマの報告が行われました。まず、韓国における教師の「労働運動」の意味と変遷、そして教師の「教育権」をめぐる制度的環境に対する歴史的変化を扱った本報告は、韓国において「教師」という職業の社会的地位とその変化、そして「教育権」という概念の意味をめぐってより根本的に考える貴重な時間でした。特に本報告では、これと深く関わる最近起きた具体的な事件とその展開様相に基づいて議論を展開することで、現在韓国社会に関する最もタイムリーな一面を扱っている点でも注目されました。
報告に続いて行われた指定討論と質疑応答では、最近韓国全体を揺り動かしている教育現場の切実な問題について、理念的・政治的言説に偏ることなく発展的な議論につながる方向への模索が必要であるとの問題意識が強く共有されました。