韓国研究センター年報vol.1

九州大学韓国研究センター長 石川 捷治

 このたび九州大学韓国研究センターは、『韓国研究センター 年報』を創刊することになりました。九州大学は1911年(前身の福岡医科大学は、1903年)の開学の創設期から、戦前・戦後を通じてアジアに対して学問的な目を向け、多くの留学生・研究者等を受け入れ、アジアにおける中核的な研究拠点としての役割を担ってきました。とくに韓国とのつながりは強く、九州・福岡が日韓海峡圏という同じ生活圏に属するところから、共通の課題の研究に文系・理系を問わず取り組んできました。他大学には見られない本学の特色の一つです。1999年7月1日、本学と韓国国際交流財団との協定が結ばれ、日本の国立大学としては初めての大規模な研究助成を受けることになりました。本学のこれまでの歩みと韓国研究のレヴェルの高さと層の厚さが評価されてのことです。2000年1月19日、九州大学は、日本における韓国研究の拠点を目指して九州大学韓国研究センターを開設いたしました。本センターの建物は、新キャンパスへの移転前であり、本格的な建物が建てられないという事情もあって、2階建ての小さなものです。しかし、建物は小さくとも、夢は大きく、本センターは新しい型の、新しい時代の研究センターを目指したいと考えています。
 第1に、次世代の研究センターとして、研究員が研究室に閉じこもって研究するというスタイルではなく、韓国研究の開かれたネットワークの結節点でありたいと思っております。幸い学内には、これまでの歴史的・地理的関係から韓国研究、及び韓国との学術交流の専門家がたくさんおられます。学内でネットワークを作り、学内と学外、そして韓国との学術交流のネットワークを作り上げたいと考えています。
 第2に、日韓の学術交流では、共同研究や人の交流を通して、韓国からの情報はもちろんですが、日本から韓国へのフィードバックも充分に果たしたいと思います。とくに、本センターは韓国国際交流財団のご支援を頂き、様々なプログラムが可能となっております。そうであるからこそ、本センターは韓国の人々にとっても納得のいく研究内容を示していかなければならないと考えています。本当の意味で、玄界灘をまたぐ「知の共同作業」ができるようになりたいと考えています。
 第3に、若い世代の新しい日韓関係を作るために、本センターでは、研究センターの「研究」というイメージに捉われず、学生・教職員・市民へ日韓両国の学術・文化・スポーツ等の情報も、どしどし提供したいと考えています(センターの1階部分は、そのような交流の場です)。その中から、韓国の金鐘泌前国務総理が1998年11月の本学での講演において強調されたとおり、新しい時代を担う新しい世代が育ってくると確信しています。また、日韓関係だけでなく、日韓関係をアジアの中に位置づけ、人文・社会・自然科学を総合した韓国研究、さらには、そこからアジア学の構築をも目指したいと思っています。夢は大きくとも、何分出発したばかりのよちよち歩きのセンターです。これまで以上のご指導・ご支援をお願い申し上げまして、創刊の辞とさせて頂きます。

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九州大学韓国研究センター
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